野球のシミュレーション その2

その1はこちら
打順と打撃成績のチームの得点力に与える影響を考えるわけですが、以下の方法で行いました。(なぜそういった方法で行ったかについては長くなるし、つまらないだろうから説明しません。)

  1. 実測のチームデータを参考に乱数で現実のチームに似て非なるチームをたーくさん作る。
  2. そのチーム群の得点力データをとる。(超時間かかった)
  3. 取ったデータの各チームの打撃成績を説明変数、チームとしての得点力を従属変数として重回帰分析する。(説明変数は打者9人のヒット、2塁打、3塁打、本塁打四死球の各割合(凡打率はそれらの割合の和を1から引いたものなので除外)なので計45個の変数)

以上の手順を踏むと、各偏回帰係数\beta_{\fs{-3}ij}がi番打者のj塁打率(便宜上四死球を5塁打として)が1単位上昇したときにチームとしての攻撃力がどの程度上昇するかを示すことになります。
※例えば、4番打者の本塁打率がチームの得点力に対して線形に作用するか?と言えば当然答えはノーなわけですが、現実的には打者の各ヒット率は0〜30%、得点に大きな影響を与えると思われる本塁打率に関しては0〜10%の範囲に十分収まり、その範囲での線形近似化は十分意味を持つと判断しました。
以下にその偏回帰係数を示します。

打順 ヒット 2塁打 3塁打 本塁打 四死球
1 0.0347 0.0485 0.0572 0.0795 0.0308
2 0.0342 0.0485 0.0564 0.0798 0.0299
3 0.0332 0.0474 0.0551 0.0792 0.0289
4 0.0334 0.0479 0.0570 0.0797 0.0290
5 0.0332 0.0463 0.0565 0.0773 0.0284
6 0.0319 0.0452 0.0535 0.0746 0.0274
7 0.0311 0.0440 0.0530 0.0731 0.0267
8 0.0303 0.0423 0.0503 0.0711 0.0261
9 0.0297 0.0408 0.0505 0.0694 0.0255

見難くてすみません。数字の読み方は、例えば1番打者のヒットの項目は0.0347ですがこれは「一番打者のヒット率が1%上昇するとチームとしての1試合あたりの得点力は0.0347点上昇する」ことを意味します。
次にグラフ。

グラフの縦軸は、見易さと比較し易さを考慮して1番打者のヒット寄与を1として相対化してあります。つまり、例えば9番打者の本塁打寄与はグラフ上では約2ですが、これは1番打者がシングルヒット率を2%上げることと9番打者が本塁打率を1%上げることがほぼ等価であることを示しています。
以上の結果から読めることをいくつか書いてみると

  • シングルヒットと比較して概ね2塁打は約1.4倍、3塁打は1.7倍、本塁打は2.3倍、四死球は0.9倍の(得点力という観点で)価値がある。
  • 得点寄与は一般に打順が後ろになるほど低下するが、次のような特筆すべき傾向がある。
    • 4番以前と5番以後ではグラフの傾きが明らかに異なる。
    • 長打の寄与率は4番までは殆ど落ちない。(むしろ上昇している箇所もある)その代わり5番以降の寄与率は急激に下がる。
  • 従って長打率が高くシングルヒット率が低い打者(いわゆる長距離打者)を4番付近に置くという慣習は非常に理にかなったものであることが分かる。(5番は微妙ですが)
  • しかしシングルヒットや四死球に関しては明らかに上位打者の方が得点寄与が大きいので長打力があっても相対的に出塁率が高い打者は4番でなく1番のほうが適している。
  • 生起確率が低いため3塁打のグラフがボコボコしててすみません。

という感じ。
2回でこの話は終わりにするつもりでしたが、あと1回この話を元にした打順理論やコメント欄で質問された局所戦略(敬遠すべきか?、送りバントの有効性etc..)の話をして終わりにしようと思います。